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従業員が第三者の行為によって業務中または通勤途中にお怪我をされたとき

[ 労働保険関連のお仕事 ] 2011年12月28日

従業員が、外勤業務などの仕事のために道路を歩いている時や、もしくは通勤途中で、自動車にはねられたり、ビル建設の現場で誤って落とした建築材料の下敷きになって、負傷したり死亡したりすることがあります。このように、被災労働者やその事業主以外の者の行為によって発生した業務災害または通勤災害を、労災保険では「第三者行為災害」と呼びます。

このような第三者行為災害の場合は、その災害を発生させた者(第三者)からも民法上の損害賠償を受けることができます。ただし、保険給付も上記の損害賠償も、その内容や価額に多少の差異はあるにせよ、被災労働者の死傷によって生じた損害の填補を目的とするものであるため、被災労働者やその遺族がこれらの全部を受けることができることとすると、実際の損害額よりも多くの補償を受けることとなって不合理です。そこで、労災保険では、このような不合理が生じないように、重複して補償されることのないように配慮しています。

たとえば自動車事故によるものである場合は、自動車損害賠償責任保険(以下では「自賠責保険」という)の損害賠償を受けることもできますが、労災保険と自賠責保険の両方の保険からの保険金支払を同時に受けることはできません。そのため、どちらか一方の保険を選択して保険金支払を受けることになりますが、どちらの保険金支払いを先に受けるかについては、被災労働者等が自由に選べます。

しかし、自賠責保険等からの保険金支払を先に受ける場合(これを「自賠先行」という)には、先に労災保険から保険金支払を受ける場合よりも有利な点があります。自賠責保険を先に選択した場合、仮渡金制度や内払金制度を利用することによって損害賠償額の支払が事実上速やかに行われること、自賠責保険は労災保険の給付より幅が広く、例えば、労災保険では給付が行われない慰謝料が支払われること、療養費の対象が労災保険より幅広いこと、さらに休業損害が原則として100%填補されることなど、被災労働者等にとって様々なメリットがあります。

最後に、第三者行為災害の場合、労災保険の受給権者である被災労働者と第三者との間で、被災労働者等の有する全ての損害賠償についての示談が真正に成立し、受給権者が示談額以外の損害賠償の請求権を放棄した場合、政府は、原則として示談成立以後の労災保険の給付を行わないこととなっています。
したがって、示談を行うときは事前に所轄の労働基準監督署に連絡し、示談後は、速やかに労働局又は労働基準監督署に申し出る必要があります。

※このページは2011年12月28日時点の情報を元に執筆されています。最新の情報とは異なる場合もございますので、あらかじめご了承ください。

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